歯根膜炎とは|噛むと痛い・歯が浮く症状と、歯科での治し方
食事のときに、その歯だけが当たって痛い。歯が少し伸びたような、浮いたような感じがする。そんな状態が続いていませんか。
結論から申し上げます。歯根膜炎(しこんまくえん)は、自然に治まるのを待つ種類の症状ではありません。 痛みがいったん引くことはありますが、それは原因がなくなったという意味ではないためです。原因を確かめ、その原因に合った処置を受けることが、遠回りに見えていちばん近道です。
※本記事は、実在の患者さんに基づかない一般的な解説です。実際の診断・治療方針は、診察のうえで判断します。
歯根膜炎とは、どこが炎症を起こしている状態か
歯の根と、それを支える骨(歯槽骨〔しそうこつ〕)のあいだには、歯根膜という薄い膜がはさまっています。日本歯科医学会「歯周病の治療に関する基本的な考え方」(令和2年3月)は、歯を支える歯周組織を「歯肉、セメント質、歯根膜、歯槽骨」の4つとして説明しており、歯根膜はその一員です。
この膜には、噛む力を受け止めるクッションと、噛んだ感触を伝えるセンサーの2つの役割があるとされています。炎症が起きると、この2つの働きがそのまま症状に出ます。 力を受け止めきれずに噛むと痛み、センサーが過敏になって「歯が浮いている」ように感じられる、というかたちです。
よくある症状
- 噛むと痛い。その歯だけが先に当たる感じがする
- 歯が浮いたような、伸びたような感覚
- 歯ぐきが腫れる、押すと痛い
- 何もしていなくてもズキズキと痛みが続く(急性の場合)
- ときどき違和感が出ては落ち着く(慢性の場合)
症状の軽さが、内側で起きていることの軽さと一致するとは限りません。
原因は、大きく3つに分かれます
1. 虫歯が神経を越えて、根の先まで進んだ場合
厚生労働省の e-ヘルスネット「むし歯の特徴・原因・進行」には、進行したむし歯では歯の神経にまで細菌が達し、さらに進行すると歯の根元にまで達して病巣ができ、歯肉から膿が出ることもある。この場合は歯を抜かなくてはならないこともあると説明されています(同資料)。歯根膜は、この「根の先」のすぐ外側にあります。神経の側の感染が根の先を越えて広がると、歯根膜にも炎症が及びます。
2. 歯周病が進んで、歯を支える組織が壊れてきた場合
歯周病は、歯ぐきの炎症から始まり、歯を支える骨(歯槽骨)が溶けていく病気です。歯周組織には歯根膜も含まれるため、進行すると歯根膜も影響を受けます。
e-ヘルスネット「歯周疾患の自覚症状とセルフチェック」は、「硬いものが噛みにくい」「歯肉がときどき腫れる」「歯がグラグラする」を挙げ、当てはまる場合は歯科医療機関で検査を受ける必要があるとしています(同資料)。噛んだときの痛みを調べると、歯周病のほうが主な背景だったということもあります。
3. その歯だけに強い力がかかっている場合
詰め物・被せ物がわずかに高い、歯を強く噛みしめる癖がある、硬いものを噛んで衝撃が加わった、ぶつけた——こうした場合にも歯根膜が傷むことがあります。虫歯も歯周病も見当たらず、「原因が分からないのに痛い」と感じられやすいのが特徴です。なお、3つの原因が重なることもあります。
歯科では、まず何を調べるか
原因が3つに分かれるということは、原因を決めないと治療が決まらないということです。一般的には次の検査を組み合わせます。
- レントゲン撮影 — 根の先の状態、歯を支える骨の変化
- 打診(軽く叩く検査) — どの歯がどの方向に反応するか
- 歯周ポケットの検査 — 歯周病がどこまで進んでいるか
- 歯の神経の反応を見る検査 — 神経が生きているかどうかで治療の方向が変わります
- 噛んだときの当たり方の確認 — 特定の歯に力が集中していないか
原因別に、歯科で行う治し方
強い力が原因のとき — 強く当たっている部分をわずかに調整し、その歯にかかる力を減らします。詰め物・被せ物が高い場合は高さを整えます。
神経の側の感染が原因のとき — 歯の根の中を清掃・消毒する治療(根管治療)を行います。回数がかかることが多く、途中でやめると炎症が戻ることがあります。
歯周病が原因のとき — 歯石の除去など歯周病に対する治療を進めます。歯ぐきが落ち着くにつれ、噛んだときの痛みも和らぐことが期待できます。
急性で、腫れや強い痛みが出ているとき — まず痛みと腫れを落ち着かせることを優先し、膿の出口をつくる処置や、細菌の感染に対する薬の処方を行うことがあります(適応は診察のうえで判断します。すべての方に同じ処置を行うわけではありません)。
根の先に膿の袋が残っている場合 — 根の中からの治療では届かないことがあり、外科的な処置を検討することがあります(歯根端切除術について)。歯ぐきにおできのようなふくらみができて膿が出る場合は フィステルについて もご覧ください。
自分でできること・できないこと
できること — その歯で強く噛まない/患部を舌や指で押さない/痛みが強いときは頬の外側を冷たいタオルで軽く冷やす(氷を直接当てないこと)/市販の痛み止めを表示どおりの用法・用量で使う。
できないこと — 市販の痛み止めは、痛みを一時的に抑えるもので、炎症の原因を取り除くものではありません。 e-ヘルスネットも、むし歯について崩壊した歯質は自然に回復することはなく、痛みを伴い、自然治癒をしないため治療が必要になると説明しています(同「むし歯の特徴・原因・進行」)。痛みが引いたことを「治った」と受け取ると、慢性化して見つかりにくくなることがあります。
早めにご相談いただきたいとき
- 頬やあごの下まで腫れてきた
- 熱が出た、口が開けにくい
- 眠れないほどの痛みが続いている
- 痛みは落ち着いたが、噛むと違和感が残っている
- 同じ歯で、腫れたり引いたりを繰り返している
歯ぐきの状態もあわせて気になる方は、歯周病と口臭の関係、検査で分かること・分からないこと もご覧ください。
大阪・羽曳野で相談先をお探しの方へ
当院(大阪・羽曳野)は、近鉄古市駅から徒歩3分の場所にあります。専用駐車場と、すぐ近くに提携パーキングがあり、お車でお越しの方にも通っていただきやすい場所です。診療時間は平日9:00〜17:00、土曜は9:00〜13:00です(土曜午後・日曜・祝日は休診)。
詳しくは 診療時間・アクセス、はじめての方は 初めての方へ をご覧ください。
まとめ
- 歯根膜炎は、歯の根と骨のあいだにある膜に炎症が起きた状態です
- 主な症状は「噛むと痛い」「歯が浮いたような感じ」「歯ぐきの腫れ」です
- 原因は、虫歯が根の先まで進んだ場合・歯周病が進んだ場合・その歯に強い力がかかっている場合の3つです
- 原因によって治療が変わるため、まず検査で原因を確かめることから始めます
- 市販の痛み止めは痛みを抑えますが、原因は残ります。自然に治まるのを待つ状態ではありません
噛むと痛い、歯が浮いた感じが続くときは、原因を確かめるところから始めましょう。まずはご相談ください。
ご予約・お問い合わせ
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この記事の監修・参考情報
監修:医療法人えみは会 理事長 加藤直之(歯科医師)/口腔外科歴20年以上。平成25年8月まで青山病院にて非常勤(歯科口腔外科・ドライマウス・舌痛症外来を担当)
参考情報
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「むし歯の特徴・原因・進行」(監修:相田潤・東京科学大学 教授/最終更新 2020年1月15日)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-02-001.html
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周疾患の自覚症状とセルフチェック」(監修:内藤徹・福岡歯科大学 教授/最終更新 2021年11月18日)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-03-003.html
- 日本歯科医学会「歯周病の治療に関する基本的な考え方」(令和2年3月)
https://www.jads.jp/assets/pdf/basic/r02/document-200401-1.pdf


