歯磨きを忘れた朝の口臭、どうする? 一過性かどうかの見分け方
歯磨きを忘れた朝に口臭が気になるのは、前の晩に磨いてから長い時間が経っているためです。多くは一過性ですが、日中まで続くなら別の原因が隠れていることもあります。
本当に困るのは、それが「今日だけの話」なのかどうか、自分では分からないことのほうです。この記事では、対処法を並べる前に、切り分けの手がかりからお渡しします。
まず、「朝だけ」かどうかを確かめてください
自分の口のにおいは自分では確かめにくいもの。においそのものではなく 「どういうときに強くなるか」 を手がかりにすると判断しやすくなります。
口臭には日内変動があり、食事やうがいなど口を動かす活動から時間が経つほど、においのもとになるガスの濃度は高くなるとされています。においのもとになる舌の汚れも、起床時や、長く食事をとらなかったあとに多くなる傾向があり、噛む・飲み込むといった動きや唾液の分泌量と関係があると考えられています(厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の原因・実態」「口臭の治療・予防」)。これは異常ではなく、時間帯による変化です。
唾液が戻れば落ち着くものが一過性の口臭です。ここが切り分けの起点になります。
一過性と考えやすいサイン
- 起きたときだけで、歯磨きや朝食のあとには気にならなくなる
- 長い時間、食事をとらなかったあとに感じた
- 前の日に食べたもの・飲んだものの影響が思い当たる
- 緊張していたとき、口が渇いていたときに強く感じた
食べたもの・飲んだものによるにおいを除けば、いずれも唾液の量が変わるタイミングです。
歯科で確かめたほうがよいサイン
- 歯磨きをしても、日中までにおいが続く
- 家族に繰り返し指摘される
- 歯ぐきから血が出る、腫れている、下がってきた
- 大きな穴があいたまま、治していない歯がある
- 以前と比べて、においの質が変わったと感じる
こちらは唾液が戻っても落ち着かない型で、時間帯で説明がつかないにおいには別の背景が考えられます。
判断に迷うときは、1週間だけメモしてみてください
どちらとも言いきれない方は、朝・昼・夕方の3回、気になったかどうかだけを1週間メモしてみてください。 ◯か×を書くだけで構いません。
朝だけに◯がつくのか、時間帯に関係なく続いているのか。診察でお聞きすることとも重なります。
※上の「歯科で確かめたほうがよいサイン」に当てはまるときは、メモを待たずにご相談ください。
歯磨きを忘れた朝、その日にできること
「今朝は磨かずに家を出てしまった」という日でも、道具なしでできることがあります。
出かけたあとでもできる3つ
- 水やお茶で口をすすぐ、水分をとる — うがいをする、水を一口飲む。それだけでも、乾いたままの状態からは変わります。
- よく噛む — 朝食のときに意識してよく噛むと、唾液が出やすくなります。食事の時間が取れなかったときは、シュガーレスのガムでも構いません。
- 唾液腺のあたりをやさしくマッサージする — 耳の下やあごの下が対象です。強く押す必要はなく、指の腹で小さく回す程度で十分です。
逆に、やらなくていいこと
焦って強く磨く、舌を何度もこする、洗口液だけで済ませる——このあたりは、かえって遠回りになることがあります。
とくに舌は、頻度と力加減を誤ると表面を傷めることがあります。舌の清掃は起床時の1回で十分とされ、それ以上行うと舌の粘膜を傷つけるおそれがあります。また、舌に傷や潰瘍があるときは、舌の清掃を中止してください(いずれも厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の治療・予防」)。回数を抑えるのは舌の清掃についての目安で、歯磨きはふだんどおり行ってください。洗口液についても、歯磨きの代わりにはなりません。
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「今日だけの話」ではなさそうなとき、何を考えるか
日中まで続くなら、においの出どころを考える段階です。
口臭の主な成分は「揮発性硫黄化合物」と呼ばれるガスで、その大部分は口の中に由来するとされています(厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の原因・実態」)。発生源は大きく分けて、舌の汚れ(舌苔)/歯ぐき/体の内側の3つで、治していない歯や口の渇きも関わります。原因が違えば対処の仕方も違います。
舌の汚れが背景にあると考えられる場合
舌の表面は、においのもとがつくられやすい場所です。舌が原因と考えられるガス(硫化水素)が強く出ている場合には、当院で舌の表面を綿棒で軽くこすって、菌を調べる検査(培養検査)を行うことがあります。検査で菌が確認されたときは、その菌に応じたお薬を使った治療を行うことがあります。効果のあらわれ方には個人差があります。
歯ぐきが背景にあると考えられる場合
歯ぐきから血が出る、腫れているといったサインが一緒にあるときは、歯ぐきの状態を確認する価値があります。当院では、歯ぐきの溝の深さや出血の有無を調べる検査から確かめます。
歯ぐきの炎症が背景にある場合、そのままにすると歯を支える組織に影響が及ぶことが知られています。
治していない歯が残っている場合
大きな穴があいたまま治していない歯は、においと関わることがあります。においだけから原因は特定できないため、心当たりがあれば、その確認から始めてみてください。
口の渇きが、朝以外にも続いている場合
寝ている間に口が開いていると、口の中の水分は蒸発しやすくなります。ただ、それが朝だけでなく日中もずっと続く場合は、朝の口臭とは別の背景が考えられます。
口の渇きが背景にあると考えられるときは、当院で血液検査を行うことがあります。口の渇きは、唾液をつくる唾液腺の炎症や、膠原病といった全身の病気にともなって起こることが知られているためです。血液検査は、そうした背景がないかを確かめる手がかりとして行うもので、これだけで病名が確定するわけではありません。結果から歯科の範囲を超えると考えられるときは、内科などの受診をおすすめし、必要に応じて紹介状をお書きします。
歯科の領域ではない場合もあります
においのもとになるガスには、体の内側(消化器など)に由来すると考えられるものもあります。この場合も、まず歯科で確かめたうえで、次にご相談いただく先をご案内します。
ここまでの検査・治療は、いずれも保険診療の範囲で行うことができます(実施の要否は診察のうえで判断します。適用の範囲は症状により異なる場合があります)。
3つの出どころは、当院の口臭予防のページでも説明しています。
よくある質問
Q1. 歯磨きを忘れた日は、口臭が一日中続きますか?
唾液が出はじめると落ち着いていくことが多いと考えられます。夕方になっても気になる場合は、その日の歯磨きだけが理由ではない可能性があります。
Q2. 歯磨きは朝食の前と後、どちらがよいですか?
どちらか一方だけが正しい、というものではありません。朝のにおいが気になる方は、起きてすぐに軽く磨く(時間がなければうがいだけでも)ことを試してみてください。続けやすい方法を選ぶことが大切だと考えています。
Q3. 洗口液だけで済ませてもよいですか?
洗口液は歯磨きの補助であり、代わりにはなりません。使い方と順番はマウスウォッシュの記事にまとめています。
Q4. 家族に指摘されました。気にしすぎでしょうか?
家族の指摘は気づきのきっかけになります。気にしすぎかどうかを含めて、確かめることはできます。「治療の必要がない」と分かることも、大切な結果のひとつです。
気になる状態が続くときは
先ほどの「歯科で確かめたほうがよいサイン」に当てはまる状態が続くようであれば、歯科で確かめてみるという選択肢があります。 まず今どうなっているかを知る、というだけのことです。
当院(大阪・羽曳野)では、口臭についてのご相談も承っています。
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この記事について
※本記事は、実在の患者に基づかない一般的な解説です。個々の状態や必要な対応については、診察のうえでご説明します。
監修:医療法人えみは会 理事長 加藤直之(歯科医師)/口腔外科歴20年以上。平成25年8月まで青山病院にて非常勤(歯科口腔外科・ドライマウス・舌痛症外来を担当)
参考情報(本文中で引用した公開情報)
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の原因・実態」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-07-001.html - 厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の治療・予防」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-07-002.html
(いずれも監修:山賀孝之・松本歯科大学教授/2019年12月18日 最終更新)


