虫歯で口臭は起こる? においだけでは決められない理由と確かめ方
口臭が気になったとき、「虫歯があるからかもしれない」と考える方は少なくありません。
結論から申し上げます。虫歯が口臭に関わることはあります。ただし、においだけで「虫歯かどうか」を決めることはできません。 口臭全体でみたとき、においの強さと関連が強いのは別のところにあると報告されているからです。
この記事では、虫歯と口臭の関わり方と、確かめる順番を整理します。
※本記事は、実在の患者さんに基づかない一般的な解説です。実際の診断・治療方針は、診察のうえで判断します。
虫歯が口臭に関わるのは、どんなときか
口臭の主な成分は「揮発性硫黄化合物」と呼ばれるガスです。口の中にすむ嫌気性菌(酸素の少ない環境を好む細菌)が、唾液や食べかすに含まれる硫黄を含んだアミノ酸を分解することで作られるとされています(厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の原因・実態」)。
では虫歯はどう関わるのでしょうか。同じ e-ヘルスネットは、病気が背景にある口臭について「その代表的なものが歯周病です」としたうえで、「歯周病の他には、大きなむし歯や粘膜の潰瘍などが原因となることがあります」と記しています(「口臭の治療・予防」)。
なぜ「大きな」虫歯なのか
虫歯が進むと、歯に穴があき、汚れの溜まりやすい場所ができます。さらに進んで歯の神経(歯髄)まで達すると歯髄炎を起こし、化膿して歯髄壊疽(えそ=神経が死んだ状態)になったり、歯根の先に炎症が進んで膿の袋ができたりすることがあるとされています(厚生労働省 e-ヘルスネット「歯の治療の流れ」)。
つまり、においと結びつきやすいのはそこまで進んだ状態のほうです。逆にいえば、始まったばかりの小さな虫歯は、においの手がかりになりにくいと考えられます。「においがしないから、虫歯もない」とは言えないということでもあります。
口臭全体でみると、主な出どころは別にあります
口臭の大部分(80%以上)は口の中に由来するとされています。そのうち歯周病と舌の汚れ(舌苔)が原因のほとんどを占め、この両者では舌苔からの産生量のほうが多いといわれています(厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の原因・実態」)。
同じ資料には、18〜64歳の2,672名を対象に口臭のもとになる物質を機器で測定した調査として、「口臭と関連するのは舌苔と歯周病の存在であり、その強さは舌苔の方が歯周病より大きい。一方で、歯垢・う蝕・歯磨き習慣・喫煙の影響はほとんどない」という報告が紹介されています。「う蝕」とは虫歯のことです。
ですから「虫歯さえ治せば、においも収まるはず」と先に決めてしまうと、出どころを取り違えてしまうことがあります。
においだけでは、虫歯かどうかを決められません
においの質から虫歯を見分けようとする方もいますが、その前に知っておいていただきたいのが、自分のにおいの感じ方そのものが、あてになりにくいということです。厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の原因・実態」には「口臭の自己評価と実際の口臭の有無とは相関しない」という報告も紹介されています。鼻のまわりで常に発生しているにおいには、慣れてしまうためです。
虫歯ができやすい場所は、自分では見えません
虫歯が発生しやすいのは、歯垢を取り除きにくい奥歯の溝・歯と歯の間・歯ぐきに近い部分だとされています(厚生労働省 e-ヘルスネット「むし歯の特徴・原因・進行」)。いずれも鏡では確認しにくい場所です。
同じ資料には、治療に使った歯科材料と歯とのすき間から細菌が入り、詰め物の底の部分に虫歯ができることもあるとも書かれています。一度治した歯についても、その下までは自分では見えません。
さらに「歯ブラシの届く場所のむし歯は歯みがきで防げますが、最もむし歯になりやすい部位のむし歯は歯みがきでは防げません」とも記されています。
自分で気づける手がかりと、その範囲
気づきやすいサインとしては、次のようなものがあります。
- 冷たいもの・甘いものでしみる
- 噛んだときに痛みがある
- 歯の表面に黒ずみが見える
- 決まった場所に食べ物がよく挟まる
- 詰め物や被せ物が取れたままになっている
ただしこれらは、あくまで見える範囲・感じられる範囲の手がかりです。さきほどの「最も虫歯になりやすい場所」は、この中に含まれていません。手がかりが見当たらないことは、虫歯がないことの確認にはなりません。
歯科では、どういう順番で確かめるか
当院(大阪・羽曳野)では、次の順番でお話を伺い、確認していきます。
1. 歯そのものを確かめる
見える範囲は目で確認し、歯と歯の間や詰め物の下など、見ただけでは分からない場所は、必要に応じてエックス線検査で確かめます。エックス線では、口の渇きの原因になることがある唾石(唾液腺の石)も確かめます。においがあるかどうかではなく、口の中の状態を見る段階です。
2. 歯ぐきの状態を確かめる
歯ぐきの検査は、ポケットの深さ・出血の有無・歯の動揺を調べる「歯周基本検査」と、骨の状態をみるエックス線検査が基本とされ、診断と治療計画を立てるために行われます(日本歯科医学会「歯周病の治療に関する基本的な考え方」令和2年3月)。出血は、いま歯ぐきに炎症が起きているかどうかの手がかりです。
3. においの出どころを測って切り分ける
当院では、口臭測定器(オーラルクロマ)でガスの種類とレベルを測定しています。
- 息を採取するだけの検査です。採取の時間そのものは約1分、結果が出るまでが約4分。痛みを伴うことはほとんどありません
- 費用は 550円(税込) です。これは測定に使うシリンジの物品としてのお支払いで、測定のたびごとにかかります(保険診療の初診料・再診料などは別途かかります)
- 保険診療を受けたその日に、あわせて口臭測定を受けていただけます
※ここでの 550円は、口臭測定に使うシリンジの費用です。歯や歯ぐきの検査・治療にかかる費用は内容によって異なり、保険が適用されるものと自由診療になるものがあります。
なお、においのもとになるガスには、体の内側(消化器など)に由来すると考えられるものもあります。歯科で確かめた結果そう考えられるときは、歯科の範囲を超えると考えられるため、内科などの受診をおすすめし、必要に応じて紹介状をお書きします。
ご自宅でできること
- 舌の清掃は起床時の1回で十分とされ、それ以上行うと舌の粘膜を傷つけるおそれがあります。また、舌に傷や潰瘍があるときは、舌の清掃を中止してください(いずれも厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の治療・予防」)。やり方は 舌磨きはやった方がいい?専門家がズバッと結論を出します【口臭ケア】 にまとめています
- 虫歯の予防としては、歯みがきに加えてフッ化物の利用・奥歯の溝を埋めるシーラント・糖分の摂取制限が挙げられています(厚生労働省 e-ヘルスネット「むし歯の特徴・原因・進行」)。歯ブラシが届きにくい場所ほど、歯みがき以外の工夫が意味を持ちます
まとめ
- 大きく進んだ虫歯は、口臭の原因になることがあります
- 一方で多くの方をまとめてみたとき、においの強さと関連が強いのは舌の汚れと歯ぐきだと報告されています
- 虫歯ができやすいのは自分では見えない場所です。においの有無から、虫歯があるかどうかは決められません
- 歯そのもの・歯ぐき・においの出どころを、順番に確かめていくのが近道です
口臭が気になる方、しばらく歯科を受診していない方は、まず検査・ご相談から。
ご予約・お問い合わせ
お電話:072-957-2686
WEB 予約:WEB初診予約はこちら
口臭測定について詳しくは 口臭測定(口臭予防)のご案内 をご覧ください。
この記事の監修・参考情報
監修:医療法人えみは会 理事長 加藤直之(歯科医師)/口腔外科歴20年以上。平成25年8月まで青山病院にて非常勤(歯科口腔外科・ドライマウス・舌痛症外来を担当)
参考情報
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の原因・実態」(監修:山賀孝之・松本歯科大学 歯学部 公衆衛生学講座 教授/2019年12月18日 最終更新)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-07-001.html - 厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の治療・予防」(監修:同上/2019年12月18日 最終更新)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-07-002.html - 厚生労働省 e-ヘルスネット「むし歯の特徴・原因・進行」(監修:相田潤・東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 歯科公衆衛生学分野 教授/2020年1月15日 最終更新)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-02-001.html - 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯の治療の流れ」(監修:野村義明・鶴見大学 歯学部 探索歯学講座 准教授、星佳芳・国立保健医療科学院/2020年1月16日 最終更新)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-01-004.html - 日本歯科医学会「歯周病の治療に関する基本的な考え方」(令和2年3月)
https://www.jads.jp/assets/pdf/basic/r02/document-200401-1.pdf


