スポーツドリンクで口臭はくさくなる? 糖分・酸と、飲み方で変わること

アクエリアスやポカリスエットなどのスポーツドリンクを飲むと、口臭がくさくなるのではないか——そう気になったことはありませんか。
結論から申し上げます。スポーツドリンクそのものが、飲んですぐ強いにおいを出すわけではありません。 ただし、糖分や酸の性質、そして飲む場面によっては、口の中の環境が変わりやすくなることはあります。
※本記事は、実在の患者さんに基づかない一般的な解説です。実際の診断・治療方針は、診察のうえで判断します。
そもそも、口臭はどこから来るのか
口臭のもとになるのは、「揮発性硫黄化合物(きはつせいいおうかごうぶつ)」と呼ばれるガスです。口の中にすむ嫌気性菌(けんきせいきん=酸素の少ない環境を好む細菌)が、唾液や、はがれた粘膜の細胞、食べかすなどに含まれる硫黄を含んだ成分(含硫アミノ酸)を分解・腐敗させることで作られるとされています(厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の原因・実態」)。
同じ資料では、口臭の大部分(80%以上)は口の中に由来し、その主な出どころは舌の汚れ(舌苔)と歯ぐきだと報告されています。18〜64歳の方を対象に、においのもとになる物質を機器で測定した調査では、においの強さと関連が強いのは舌苔と歯周病で、「歯垢・う蝕・歯磨き習慣・喫煙の影響はほとんどない」という結果も紹介されています。「う蝕」とは虫歯のことです。
つまり、「特定の飲み物を飲んだから、それだけで口臭が強くなる」という単純な関係ではありません。ここが出発点です。
それでも、口の中の環境を通して関わる3つの道すじ

では、なぜ「スポーツドリンクを飲むと口臭が気になる」と感じることがあるのでしょうか。においを直接作るというより、口の中の環境を通して関わる道すじが考えられます。
1. 糖分が、口の中の細菌のはたらきを支える
多くのスポーツドリンクには糖分が含まれています。口の中の細菌は、飲食物の中の糖分を取り込んで分解し、酸を出すことが知られています(厚生労働省 e-ヘルスネット「むし歯の特徴・原因・進行」)。この酸で歯の表面が溶けることを「脱灰(だっかい)」といいます。
ただし、においのもとになるガスの材料は、さきほどのとおり硫黄を含んだ成分です。糖分そのものがにおいの材料になるわけではありません。糖分が口の中に残る時間が長いほど、細菌が全体として働きやすい状態が続くと考えられます。
2. だらだら飲むと、口の中が酸性に傾く時間が延びる
同じ資料には、「糖分の摂取が頻繁で、酸の緩衝や再石灰化が間に合わずに脱灰された状態が続くと、その部分はそのうち崩壊する」と記されています。
少しずつ、時間をかけて何度も口に含む——いわゆる「だらだら飲み」では、口の中が酸性に傾いた状態が長く続きやすくなります。
3. 運動や発汗の場面は、口が渇きやすい
スポーツドリンクを飲む場面は、運動や発汗で体の水分が失われやすいときでもあります。こうした場面では、口が渇きやすくなります。
唾液には、酸を中和して中性に近づけ、歯を守るはたらきがあるとされています(同「むし歯の特徴・原因・進行」)。同じ資料では、唾液は溶け出したカルシウムやリン酸を歯に戻して修復する(再石灰化)はたらきももつと説明されています。口が渇いて唾液が行き渡りにくいときは、こうしたはたらきも一時的に発揮されにくくなると考えられます。口臭のもとになるガスは舌の上で最も多く作られ、その舌の汚れのつき方は、噛む・飲みこむといった動きや唾液の分泌量と大きく関係していると考えられています(厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の治療・予防」)。運動中や運動後に口の中がねばつく、においが気になる、と感じることがあるのは、こうした一時的な変化が背景にある場合もあります。
「糖分ゼロ」なら、心配いらない?
「糖分ゼロ」「カロリーオフ」と表示されたスポーツドリンクなら安心、と思われるかもしれません。
たしかに糖分が少なければ、細菌のエサという面での負担は減ります。ただし、スポーツドリンクの中には、糖分が控えめでも酸性度が高いものがあります。口の中が酸性に傾くこと自体は、糖分の有無とは別に起こりえます。
糖分ゼロでも、口の中の環境という点では、飲み方の工夫は同じように効いてきます。
糖分・酸性の飲み物と歯(虫歯)についてのより詳しい話は、こちらの記事にまとめています——スポーツドリンクは虫歯に要注意ですよ!。
飲み方で、変えられること

スポーツドリンクをやめる必要はありません。運動時など、必要な場面はあります。飲む場面や飲み方を少し工夫するだけでも、口の中の環境は変わります。
- 飲む時間をまとめる — 少しずつ長時間かけて飲む「だらだら飲み」を避け、飲む時間をある程度まとめると、口の中が糖分や酸にさらされる時間を短くできます
- 飲んだあとは、水やお茶で口の中を流す — スポーツドリンクの後に水やお茶を飲む、または口をすすぐと、残った糖分や酸が薄まります
- 寝る前は、水やお茶に切り替える — 就寝中は口の中の環境が変わりやすいため、寝る前の水分は水やお茶がおすすめです
においが気になる状態が続くときは
飲み方を工夫しても、においがずっと続く場合は、飲み物とは別の背景があるのかもしれません。
さきほどのとおり、口臭の主な出どころは舌の汚れと歯ぐきだと報告されています。そして、においの感じ方は自分ではあてになりにくいことも知られています。
当院(大阪・羽曳野)では、口臭測定器(オーラルクロマ)で、においのもとになるガスの種類とレベルを測定しています。においのもとは、舌の汚れ・歯ぐき・体の内側などで種類が違うとされており、どのガスがどの程度出ているかを測ることで、出どころを切り分ける手がかりになります。
- 息を採取するだけの検査です。採取の時間そのものは約1分、結果が出るまでが約4分。痛みを伴うことはほとんどありません
- 費用は 550円(税込) です。これは測定に使うシリンジの物品としてのお支払いで、測定のたびごとにかかります(保険診療の初診料・再診料などは別途かかります)
- 保険診療を受けたその日に、あわせて口臭測定を受けていただけます
※ここでの 550円は、口臭測定に使うシリンジの費用です。歯や歯ぐきの検査・治療にかかる費用は内容によって異なり、保険が適用されるものと自由診療になるものがあります。
なお、においのもとになるガスには、体の内側(消化器など)に由来すると考えられるものもあります。歯科で確かめた結果そう考えられるときは、歯科の範囲を超えると考えられるため、内科などの受診をおすすめし、必要に応じて紹介状をお書きします。
飲み物と口臭、そして虫歯との関わりについては、虫歯で口臭は起こる? においだけでは決められない理由と確かめ方 もあわせてご覧ください。
まとめ
- スポーツドリンクそのものが、飲んですぐ強いにおいを出すわけではありません
- ただし糖分は細菌のはたらきを支え、だらだら飲みや口の渇きは、口の中の環境を変えやすくします
- 口臭の主な出どころは舌の汚れと歯ぐきで、飲み物だけで決まるものではありません
- 飲む時間をまとめる・飲んだあとに水やお茶で流す——飲み方の工夫で変えられることがあります
- においが気になるときは、出どころを確かめるところから始めましょう
スポーツドリンクを飲む機会が増える季節、においが気になる方、しばらく歯科を受診していない方は、まず検査・ご相談から。
ご予約・お問い合わせ
お電話:072-957-2686
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口臭測定について詳しくは 口臭測定(口臭予防)のご案内 をご覧ください。
この記事の監修・参考情報
監修:医療法人えみは会 理事長 加藤直之(歯科医師)/口腔外科歴20年以上。平成25年8月まで青山病院にて非常勤(歯科口腔外科・ドライマウス・舌痛症外来を担当)
参考情報
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の原因・実態」(監修:山賀孝之・松本歯科大学 歯学部 公衆衛生学講座 教授/2019年12月18日 最終更新)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-07-001.html - 厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の治療・予防」(監修:山賀孝之・松本歯科大学 歯学部 公衆衛生学講座 教授/2019年12月18日 最終更新)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-07-002.html - 厚生労働省 e-ヘルスネット「むし歯の特徴・原因・進行」(監修:相田潤・東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 歯科公衆衛生学分野 教授/2020年1月15日 最終更新)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-02-001.html


