歯石で口臭は起こる?取れば治るのか・自分で取れるのかを解説

口臭が気になったとき、「歯石のせいかもしれない」と考える方は少なくありません。
結論から申し上げます。歯石は口臭に関わることがあります。ただし、歯石を取れば必ずにおいが消える、とは限りません。 口臭の出どころは一つではなく、歯石を取っても残る種類のにおいもあるからです。
この記事では、「歯石は口臭の原因なのか」「取れば治るのか」「自分で取ってもよいのか」を、公的な資料をもとに順番に整理します。
※本記事は、実在の患者さんに基づかない一般的な解説です。実際の診断・治療方針は、診察のうえで判断します。
歯石とは何か——「細菌のかたまり」が固まったもの

歯石のもとになるのは、歯垢(プラーク)です。歯みがきが十分でないと、歯と歯ぐきの境目に歯垢がたまっていきます。この歯垢は食べかすではなく、細菌のかたまりです。厚生労働省の e-ヘルスネットは「プラークの中には、1mgあたり1億個以上もの細菌が含まれます」と説明しています(「歯周病とは」)。
その歯垢の中の細菌が、唾液のカルシウムやリン酸と結びついて固まると、歯石になります。同じ資料は、歯石を 「軽石のような硬い物質」 と表現し、「細菌はこの歯石を足がかりにして、さらに(歯周)ポケットの奥深くへと進行していきます」 と記しています(同前)。
歯石そのものが強くにおうというより、歯石は細菌が住みつく「足場」になる、というイメージです。
歯石は、どう口臭に関わるのか
口臭の主な成分は「揮発性硫黄化合物(きはつせいいおうかごうぶつ)」と呼ばれるガスです。口の中にすむ嫌気性菌(酸素の少ない環境を好む細菌)が、たんぱく質やアミノ酸を分解することで作られるとされています。口臭の87%は口の中に由来することが明らかにされており、その代表的なものが歯周病だと説明されています(厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の治療・予防」)。
歯石をそのままにすると、それを足場に細菌が増え、歯ぐきに炎症が起きやすくなります。歯周病がある方では、においの成分のうちメチルメルカプタンの割合が高くなりやすいとされています(同「口臭の原因・実態」)。「歯石 口臭 どんな臭い」と気になる方が多いのは、この歯ぐき由来のにおいが関係していると考えられます。
※歯周病そのものの仕組みや、原因菌・検査については、別の記事で詳しく整理しています → PG菌とは?歯周病と口臭の関係、検査で分かること・分からないこと
「歯石を取れば口臭は治りますか?」——取れば治るとは限らない理由
歯石除去は、細菌の足場を減らし、歯ぐきの炎症を抑えるのに役立つと考えられます。ですが、「歯石を取りさえすれば、においは必ず消える」とは言い切れません。
厚生労働省 e-ヘルスネットには、18〜64歳の2,672名を対象に、においのもとになる物質を機器で測定した調査が紹介されています。その結論は、「口臭と関連するのは舌苔と歯周病の存在であり、その強さは舌苔の方が歯周病より大きい。一方で、歯垢・う蝕・歯磨き習慣・喫煙の影響はほとんどない」というものでした(「口臭の原因・実態」)。「舌苔」とは舌の表面につく白い汚れのことです。
つまり多くの方では、においと関連が強いのは舌の汚れと歯ぐきで、歯石のもとの歯垢そのものの影響は大きくないと報告されているのです。ですから、舌の汚れが主な出どころの方は、歯石を取ってもにおいが残ることがあります。
同じ資料には「口臭の自己評価と実際の口臭の有無とは相関しない」という報告も紹介されています。
舌の汚れが気になる方は、こちらもあわせてご覧ください → 舌磨きはやった方がいい?専門家がズバッと結論を出します【口臭ケア】。
「自分で歯石を取ってもいいですか?」——おすすめしない理由と、代わりにできること

市販の器具で自分で取ろうと考える方もいますが、ご自身で歯石を取ることはおすすめしません。
理由は、歯石が「軽石のような硬い物質」として歯にかたく付着しているためです。無理に削り取ろうとすると、歯の表面や歯ぐきを傷つけてしまうおそれがあります。傷ついた面には新しい歯垢がつきやすく、かえって細菌の足場を増やしかねません。
すでについてしまった歯石は、歯科での歯石除去で取り除きます。 毎日の歯みがきで落とせるのは、やわらかい歯垢のうちです。石灰化(せっかいか)して硬くなった歯石は、歯みがきでは落とせません。e-ヘルスネットも、歯周病の治療の流れとして「歯みがき指導」と「歯石除去」を別の項目として挙げています(「歯周治療の流れ」)。歯石除去(スケーリング)は歯周病治療の基本的な処置で、多くの場合、保険診療の範囲で受けられます(実際の適用は症状によって異なります)。
歯科では、どういう順番で確かめるか
当院(大阪・羽曳野)では、においの出どころを次の順番で確かめていきます。
1. 歯ぐきと歯石の状態を確かめる
歯ぐきの検査は、ポケットの深さ・出血の有無・歯の動揺を調べる「歯周基本検査」と、骨の状態をみるエックス線検査が基本とされ、診断と治療計画を立てるために行われます(日本歯科医学会「歯周病の治療に関する基本的な考え方」令和2年3月)。出血は、いま歯ぐきに炎症が起きているかどうかの手がかりです。歯石がどのくらいついているか、歯ぐきがどの程度反応しているかを、この段階で確認します。
2. においの出どころを測って切り分ける
当院では、口臭測定器(オーラルクロマ)でガスの種類とレベルを測定しています。
- 息を採取するだけの検査です。採取の時間そのものは約1分、結果が出るまでが約4分。痛みを伴うことはほとんどありません
- 費用は 550円(税込) です。これは測定に使うシリンジの物品としてのお支払いで、測定のたびごとにかかります(保険診療の初診料・再診料などは別途かかります)
- 保険診療を受けたその日に、あわせて口臭測定を受けていただけます
※ここでの 550円は、口臭測定に使うシリンジの費用です。歯石除去や歯ぐきの検査・治療にかかる費用は内容によって異なり、保険が適用されるものと自由診療になるものがあります。
なお、においのもとには、体の内側(消化器など)に由来すると考えられるものもあります。歯科の範囲を超えると考えられるときは、内科などの受診をおすすめし、必要に応じて紹介状をお書きします。
ご自宅でできること
- 歯石になる前の歯垢を、毎日ていねいに落とすこと。歯垢のうちに落としておくのが基本の予防です
- 舌の清掃は起床時の1回で十分とされ、それ以上行うと舌の粘膜を傷つけるおそれがあります。また、舌に傷や潰瘍があるときは、舌の清掃を中止してください(厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の治療・予防」)。やり方は 舌磨きのやり方 にまとめています
- ついてしまった硬い歯石は、ご自身で無理に取ろうとしないこと(歯や歯ぐきを傷つけるおそれがあります)
まとめ
- 歯石は、細菌が住みつく「足場」になり、歯ぐきの炎症(歯周病)を通じて口臭に関わることがあります
- ただし口臭の出どころは一つではなく、多くの方では舌の汚れと歯ぐきの関連が強いと報告されています。歯石を取っても、においが残ることがあります
- 硬くなった歯石は歯みがきでは落とせません。ご自身で無理に取ろうとせず、歯科での歯石除去(多くは保険診療の範囲)を
- においの出どころは、歯ぐき・歯石の状態を確かめ、測って切り分けるのが近道です
口臭が気になる方、しばらく歯科を受診していない方は、まず検査・ご相談から。
ご予約・お問い合わせ
お電話:072-957-2686
WEB 予約:WEB初診予約はこちら
口臭測定について詳しくは 口臭測定(口臭予防)のご案内 をご覧ください。
この記事の監修・参考情報
監修:医療法人えみは会 理事長 加藤直之(歯科医師)/口腔外科歴20年以上。平成25年8月まで青山病院にて非常勤(歯科口腔外科・ドライマウス・舌痛症外来を担当)
参考情報
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周病とは」(監修:内藤徹・福岡歯科大学 高齢者歯科学分野 教授/2022年11月14日 最終更新)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-03-001.html - 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周治療の流れ」(監修:米田雅裕・福岡歯科大学 総合歯科学講座 教授/2020年1月6日 最終更新)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-03-005.html - 厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の原因・実態」(監修:山賀孝之・松本歯科大学 歯学部 公衆衛生学講座 教授/2019年12月18日 最終更新)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-07-001.html - 厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の治療・予防」(監修:同上/2019年12月18日 最終更新)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-07-002.html - 日本歯科医学会「歯周病の治療に関する基本的な考え方」(令和2年3月)
https://www.jads.jp/assets/pdf/basic/r02/document-200401-1.pdf


